顔と耳まわりのツボのまとめ

顔・耳まわりのツボまとめ

今回は、復元した顔のツボと耳まわりのツボの各主治症を比較して、顔および耳まわりのツボのまとめをしたいと思います。

顔のツボ①―懸顱・頷厭・懸釐
顔のツボ②―陽白・攅竹・絲竹空
顔のツボ③―精明・瞳子髎・承泣
顔のツボ④―四白・顴髎・素髎
顔のツボ⑤―迎香・巨髎・禾髎
顔のツボ⑥―水溝・兌端・齗交
顔のツボ⑦―地倉・承漿・頬車・大迎

耳まわりのツボ①―上関・下関・耳門・和髎・聴会
耳まわりのツボ②―聴宮・角孫・瘈脈・顱息・翳風

2023.05.24
「攅竹」の「眉頭痛」を頭部から面部に移動。

目次

主治症の比較

復元した主治条文の各症状を身体の各部位に分類して、表を作成し、比較します。部位は全身、精神、頭、面、頸、項、上肢、胸脇、腹、背、腰臀、下肢としています。咽喉、胸腔、腹腔の症状はそれぞれ頸、胸脇、腹に、熱病、瘧、痙攣は全身に分類しています。狂、癲疾はおそらく高熱で脳に影響が出ていると考えられますが、精神に分類しました。その他適宜分類しています。

また、下線を引いているものは、複数の部位の記載があるものです。各部位に記しておき、着目する部位に下線を引いています。

ひとつひとつの主治条文をみて、どんな病態なのかを考えるのも大事だと思いますが、このように症状を部位ごとに分類することで、どのツボを使うかは、どこの症状なのかによって決まる傾向にあることがわかるのではないかと考えています。どこの部位の記述が多いかで、だいたいの傾向だけでも把握はできると思います。

面凡三十九穴第十

懸顱頷厭懸釐
全身熱病 身熱 煩満汗不出身熱熱病
精神
頭痛 甚者偏項1偏頭痛偏頭痛
引目外眥而急 引頷歯 面赤皮痛目眩無所見 引目外眥而急 耳鳴引目外眥
頸痛
上肢
胸脇善啑
腰臀
下肢
陽白攅竹絲竹空睛明瞳子髎承泣四白顴髎
全身汗出寒熱 瘈瘲痓 憎風寒憎寒
精神癲疾互引反折 狂走不得卧 小児癇発癲疾狂煩満 小児臍風
目瞳子痛不可以視風頭痛  眩眩頭痛頭痛
目瞳子痛不可以視鼻鼽衂 眉頭痛 目𥇀𥇀不明悪風寒2 泣出目如欲脱 面赤頬中痛 目系急 戴眼 目上挿目中赤𥇀𥇀 目上挿 反目目不明悪風目涙出 目眩瞢 目中眵䁾 内眥赤痛 目𥇀𥇀無所見 眥痒痛 生膚白翳青盲無所見 遠視𥇀𥇀 目中生膚白翳目不明 涙出 目眩瞢 眵䁾 瞳子痒 遠視𥇀𥇀 昏夜無所見 目瞤動與項3口参相引 喎噼 口不能言目痛 口噼 涙出 目不明口噼 歯痛 面赤 目赤目黄 口不能嚼 頬腫唇癰
侠項強急不可以顧項強不可左右顧
上肢
胸脇善嚏
心中煩
腰臀痔痛
下肢
素髎迎香巨髎禾髎水溝兌端齗交
全身寒熱 振寒手捲前僵寒熱 痓互引風寒熱 痓煩満
精神癲疾互引癲疾欧沫癲疾互引
頭痛
鼽衂洟出 中有懸癰宿肉 窒洞不通 不知香臭鼻鼽不利 窒洞気塞 喎噼 多洟 鼽衂有癰面目悪風寒 䪼腫癰痛 招揺視瞻 瘈瘲口噼 青盲無所見 遠視𥇀𥇀 目中淫膚白膜覆鼻窒 口噼 清洟出不可止 鼽衂有癰水腫人中盡満脣反者死 睊目目不利 口不禁水漿喎噼 鼻鼽不得息 鼻不収洟 不知香臭及衂不止脣吻強 上歯齲痛歯間血出者有傷酸 歯牀落痛 口不可開引鼻中 鼻中息肉不利 鼻頭額頞中痛 鼻中有蝕瘡 目痛不明 口僻
胸脇
腰臀
下肢
地倉承漿頬車大迎
全身手足痿躄不能行寒熱悽厥皷頷 痓 互引 身汗出寒熱 厥 悪寒 痓
精神癲疾欧沫癲疾互引
口緩不収不能言語口噤 口乾 目瞑 衂血不止牙車骨痛 歯不可用嚼 頬腫口急口喎 口僻失欠 下牙歯痛 頬腫 口不収舌不能言不得嚼 口噤
頸瘰癧
胸脇喘悸
小便赤黄或時不禁 消渇嗜飲
腰臀
下肢

1 頭の間違いと思われる
2 “悪風寒”を目に関することと解釈
3 項 “頷”あるいは“頬”の間違いか

耳前後凡二十穴第十一

上関下関耳門和髎聴会聴宮
全身瘈瘲 寒熱 痓瘈瘲瘈瘲
精神狂驚 瘖不能言羊鳴吐沫驚狂 癲疾瘖不能言羊鳴沫出
頷痛頭重眩仆眩仆
耳痛聾鳴 上歯齲痛 口噼 噤不開 口沫出 青盲𥌰目 悪風寒1失欠 下歯齲痛 耳聾鳴 下牙痛 口噼 䪼腫悪風寒2不可以嚼耳鳴聾 上歯齲 頭頷痛 引耳中𦗳𦗳䏆䏆聾耳中顛颼 歯齲痛耳聾填填如無聞𦗳𦗳䏆䏆若蝉鳴鴳鴂鳴
上肢
胸脇
腰臀
下肢
角孫瘈脈顱息翳風
全身瘈瘲身熱
精神小児癇 驚恐小児驚癇
脇痛不可反側
歯牙不可嚼齗腫失精視瞻不明眵䁾耳中鳴不聞人言聾 口噼不正失欠口噤不開
瘖不能言
上肢
胸脇痛不可反側 喘不得息
欧吐泄注
腰臀
下肢

1 “悪風寒”を目に関することと解釈
2 “悪風寒”を䪼に関することと解釈

上記の表をPDFにしたものです↓ 印刷して見た方が見やすいかも

顔や耳まわりのツボは面部に記載が集中しており、目や鼻、口、歯、頬、あご、耳などの症状に対して主に使われています。
それ以外ですと、熱病に対して懸顱、頷厭、懸釐といったもともと「顳顬」という「脈」だったと考えられるものや、正中線上にある水溝、兌端、齗交、承漿、動脈拍動部にある大迎が使われています。
水溝、兌端、齗交、承漿、大迎はてんかん発作に対しても使われています。同じく眉にある攅竹、絲竹空もてんかん発作やけいれんに使われています。聴会、聴宮もてんかん発作に使われています。聴会に関しては、『甲乙』巻之三や『医心』『外台』『千金』のツボの位置に関する記述を見ますと、動脈拍動部にとっているように考えられます(聴会に関しては『医心』『千金』動脈の記載なし)。聴会、聴宮は似たような主治症であり、「顳顬」と同様にもともとはひとつの「脈」だったものが二穴に分かれたものかもしれません。他の文献の記載を調べる必要があります。
瘈脈、顱息は小児のひきつけに使われています。この二穴も「耳間青脈」から分かれたものと考えられます。
動脈拍動部にある和髎は、大迎や聴会と違って、頭、あご、耳といった局所の症状だけです。
巨髎は鼻の近くにあるツボですが、鼻の症状はなく、目の症状が多く記載されています。瞳孔線上にあるという意識が強かったのではないかと思われます。
角孫と瘈脈は耳の近くにあるツボですが、耳の症状はありません。瘈脈は小児のひきつけに使うものだという考えが強かったからでしょうか。角孫はもともとあったけれど、伝わっていないだけか?それともやはりもともとないのか?

小結

顔や耳まわりのツボは目や鼻、口、歯、頬、あご、耳などの局所、近隣の症状に主に使われています。
ただし正中線上や眉、動脈拍動部のツボは熱病やけいれん、てんかん発作にも使われています。
以前から診断部位かつ治療部位だったと考えられる「顳顬」「耳間青脈」も、熱病や小児のけいれんに使われています。
また巨髎から、瞳孔線といったラインを意識していたことがうかがわれます。

以上の内容は、ただの趣味です。学者としての訓練・教育・指導等は受けてはいませんので、多々誤りはあるかと思いますが、どうぞお付き合いください。誤り等ご指摘いただければ幸いです。

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