顔のツボ④―四白・顴髎・素髎
顔のツボの4回目です。今回は、目の下方にある四白、頬にある顴髎、鼻にある素髎の『明堂』主治条文の復元をみていきます。
顔のツボ①―懸顱・頷厭・懸釐
顔のツボ②―陽白・攅竹・絲竹空
顔のツボ③―精明・瞳子髎・承泣
目次
面凡三十九穴第十
四白
各書の主治条文
医心主治条文
目痛口噼涙出目不明
甲乙主治条文
目痛口僻戻〈一作涙〉出目不明●四白主之(巻之十二 足太陽陽明手少陽脈動発目病第四)
外台主治条文
目痛口僻涙出目不明
主治条文の比較
医心 | 目痛口噼涙出目不明 |
甲乙 | 目痛口僻戻出目不明 |
外台 | 目痛口僻涙出目不明 |
復元 | 目痛口噼涙出目不明 |
- 噼:『医心』に従います。
単位条文化
『甲乙』に従って単位条文化すると、次の1条文になります。
①目痛、口噼、涙出、目不明。
目が痛み、口が歪んで、涙が出て、ものがよく見えない。
各症状を『甲乙』ではひとつの条文として扱っています。それに従って解釈すれば、おそらく顔面神経麻痺が原因で起こっている症状と考えられます。
顔面神経麻痺により口元が歪み、まぶたが閉じない。まぶたが閉じないために目が乾燥し、痛み、流涙(ワニの涙も含まれるか)、ひどい場合には視野障害が生じていると思われます。
顴髎
各書の主治条文
医心主治条文
口噼歯痛面赤目黄口不能嚼頬腫膺1
甲乙主治条文
口僻●顴窌2及齗交下関主之(巻之十 陽受病発風第二下)
䪼腫唇癰●顴窌主之(巻之十一 寒3気客於経絡之中発癰疽風成発厲浸淫第九下4)
目赤目黄●顴窌5主之(巻之十二 足太陽陽明手少陽脈動発目病第四)
歯痛●顴窌及二間主之(巻之十二 手足陽明脈動発口歯病第六)
外台主治条文
口僻歯痛面赤目赤目黄口不能嚼䪼腫脣癰
[1] 原文:⿸广乡隹月
[2] 「窌」=「髎」
[3] 明抄本は「客」
[4] 明抄本は「第十」
[5] 原文:⿱宀行 頭注:{⿱宀行}乃窌字誤
主治条文の比較
医心 | 口噼歯痛面赤 目黄口不能嚼頬腫 膺 |
甲乙 | 口僻歯痛 目赤目黄 䪼腫唇癰 |
外台 | 口僻歯痛面赤目赤目黄口不能嚼䪼腫脣癰 |
復元 | 口噼歯痛面赤目赤目黄口不能嚼頬腫唇癰 |
- 噼:『医心』に従います。
- 頬:『医心』に従います。「䪼」はほお骨のこと。
- 癰:『甲乙』『外台』に従います。
単位条文化
『甲乙』を参考に単位条文化すると、次の5条文になります。
①口噼。
②歯痛。
③面赤、目赤目黄。
④口不能嚼。
⑤頬腫唇癰。
①口噼。
口の歪み。顔面神経麻痺。
②歯痛。
③面赤、目赤目黄。
顔が赤く、目が赤く黄ばむ。
何かしらの感染症でしょうか。顔が赤いことから発熱があると思われます。
目が赤いのか黄色いのか。どちらの場合にも使えるということでしょうか。
発熱もあって、目が赤いとなるとアデノウイルス感染症?
目が黄色い場合は、マラリア、肝炎とかでしょうか?
④口不能嚼。
咀嚼することができない。
何が原因なのでしょうか。
①との関連なら、顔面神経麻痺が原因で口から飲食物がこぼれてしまうことを言っているか。
②との関連なら、虫歯など歯が痛いためにものが噛めない。
③との関連となるとわかりません。
⑤との関連なら、口を動かしたり咀嚼したりで、できものなり炎症部位を刺激するためでしょうか。
⑤頬腫唇癰。
頬が腫れ、唇にできものができる。
『甲乙』では巻之十一 寒気客於経絡之中発癰疽風成発厲浸淫第九下に書かれています。頬や唇にできた腫物。毫鍼ではなく鈹鍼や鋒鍼を用いて膿血を排出していたんじゃないかと思います。
素髎
各書の主治条文
医心主治条文
鼽衂洟出中有懸㿈宿肉窒洞不通不知香臰
甲乙主治条文
鼽衂洟出中有懸癰宿肉窒洞不通不知香臭●素窌主之(巻之十二 血溢発衂第七)
外台主治条文
鼽衂洟出中有懸癰宿肉窒洞不通不知香臭
主治条文の比較
医心 | 鼽衂洟出中有懸㿈宿肉窒洞不通不知香臰 |
甲乙 | 鼽衂洟出中有懸癰宿肉窒洞不通不知香臭 |
外台 | 鼽衂洟出中有懸癰宿肉窒洞不通不知香臭 |
復元 | 鼽衂洟出中有懸癰宿肉窒洞不通不知香臭 |
- 癰:『甲乙』『外台』に従います。「㿈」は「癰」の異体字。
- 臭:『甲乙』『外台』に従います。「臰」は「臭」の異体字。
単位条文化
『甲乙』に従って単位条文化すると、次の1条文になります。
①鼽衂洟出、中有懸癰宿肉、窒洞不通、不知香臭。
鼻血や鼻水が出て、鼻の中に腫物あるいは鼻茸ができて、鼻の通りが塞がり、においがわからない。
鼻にあるツボだけに鼻の症状。
以上の内容は、ただの趣味です。学者としての訓練・教育・指導等は受けてはいませんので、多々誤りはあるかと思いますが、どうぞお付き合いください。誤り等ご指摘いただければ幸いです。
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