背中のツボ⑬―附分・魄戸・神堂

附分・魄戸・神堂

背中のツボ、13回目です。今回からいわゆる足太陽膀胱経の二行線です。今回は附分、魄戸、神堂の『明堂』主治条文の復元をみていきます。

背中のツボ①―大椎・陶道・身柱・神道・至陽・筋縮
背中のツボ②―脊中・懸枢・命門・腰兪・長強
背中のツボ③―大杼・風門
背中のツボ④―肺兪・心兪
背中のツボ⑤―膈兪および膈兪と膏肓について
背中のツボ⑥―肝兪・胆兪
背中のツボ⑦―脾兪・胃兪
背中のツボ⑧―三焦兪・腎兪
背中のツボ⑨―大腸兪・小腸兪
背中のツボ⑩―膀胱兪・中膂兪・白環兪
背中のツボ⑪―上髎・次髎
背中のツボ⑫―中髎・下髎・会陽

目次

背自第二椎両傍俠脊各三寸至二十一椎下両傍凡二十六穴第九

附分

各書の主治条文

医心主治条文
 背痛引頭也

甲乙主治条文
 なし

外台主治条文
 背痛引頸

参考

『千金』巻三十
 附分主背痛引頭(四肢第三腰脊病)

主治条文の比較

医心背痛引頭也
甲乙
外台背痛引頸
千金背痛引頭
復元背痛引
  • 頭:『医心』『千金』に従います。

単位条文化

①背痛引頭。

背が痛み、その痛みが頭まで及ぶ。
次の「魄戸」の「項背痛引頚」が、『甲乙』では巻之七 六経受病発傷寒熱病第一中にあることから、外感熱病による症状か。あまりこだわらずに臨床的には筋骨格系の局所の症状と考えてもいいように思います。

魄戸

各書の主治条文

医心主治条文
 肩髆間急悽厥悪寒欬逆上気歐吐煩満項背痛引頚

甲乙主治条文
 肩髆[1]間急悽厥悪寒●魄戸主之(巻之七 六経受病発傷寒熱病第一中)
 項背痛引頚●魄戸主之(巻之七 六経受病発傷寒熱病第一中)
 欬逆上気●魄戸及気舍主之(巻之九 邪在肺五臟六腑受病発咳逆上気第三)
 嘔吐煩満●魄戸主之(巻之十一 気乱於腹[2]胃発霍乱吐下第四)

外台主治条文
 肩膞間急悽厥悪寒項背痛引頸欬逆上気嘔吐煩満背痛不能引顧

[1] 原文: ⿰骨壽 頭注:他本⿰骨壽作髆
[2] 頭注:腹乃腸字誤

主治条文の比較

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医心肩髆間急悽厥悪寒欬逆上気歐吐煩満項背痛引頚
甲乙肩髆間急悽厥悪寒欬逆上気嘔吐煩満項背痛引頚
外台肩膞間急悽厥悪寒欬逆上気嘔吐煩満項背痛引頸背痛不能引顧
復元間急悽厥悪寒欬逆上気歐吐煩満項背痛引頚
  • 髆:『医心』『甲乙』に従います。

単位条文化

『甲乙』に従って単位条文化すると、次の4条文になります。

①肩髆間急、悽厥悪寒。
②欬逆上気。
③歐吐煩満。
④項背痛引頚。

①肩髆間急、悽厥悪寒。
肩甲骨間がひきつり、ひどく寒気がする。
「悽」は「凄」の通仮字。冷たい。さむい。「悽厥」は悪寒がはげしいことを言っていると解釈します。『甲乙』では巻之七 六経受病発傷寒熱病第一中にあることから、外感熱病による症状。

②欬逆上気。
咳き込む。
「上気」はのぼせではなく、咳がこみあげてくることと解釈。呼吸器症状。

③歐吐煩満。
嘔吐し、胸苦しい。
上部消化管症状。
『甲乙』では巻之十一 気乱於腸胃発霍乱吐下第四にありますが、外感熱病によるものと考えることもできるように思います。

④項背痛引頚。
項背部の痛みが、前側の頚部にまで及ぶ。
『甲乙』では巻之七 六経受病発傷寒熱病第一中にあり、『甲乙』に従えば、外感熱病による症状。筋骨格系の症状と考えても臨床的にはいいように思います。

膏肓 『明堂』になし

『医心方』『外台』に『千金』からの引用がありますが、『甲乙』には膏肓の記載はありません。もともと『明堂』には無かったと思われます。

膏肓についての考察を「背中のツボ⑤―膈兪および膈兪と膏肓について」でしているので、ご覧いただければ幸いです。

神堂

各書の主治条文

医心主治条文
 肩痛胸腹満洒沂脊背強急也

甲乙主治条文
 肩痛胸腹満悽厥脊背急強●神堂主之(巻之七 六経受病発傷寒熱病第一中)

外台主治条文
 肩痛胸腹満悽厥脊背急強

主治条文の比較

医心肩痛胸腹満洒沂脊背強急也
甲乙肩痛胸腹満悽厥脊背急強
外台肩痛胸腹満悽厥脊背急強
復元肩痛胸腹満洒沂脊背急強
  • 洒沂:『医心』に従います。
  • 強急:『医心』に従います。
    急強:『甲乙』『外台』に従います。『千金』「神道・・・膀胱輸主腰脊急強」(追記2023.03.09 以下も同様に修正)

単位条文化

『甲乙』に従って単位条文化すると、次の1条文になります。

①肩痛、胸腹満、洒沂、脊背急強。

肩が痛み、胸、腹が苦しく、寒くてふるえ、背が強ばりひきつる。
『甲乙』では巻之七 六経受病発傷寒熱病第一中に置かれています。『甲乙』に従えば、外感熱病による症状となります。
「肩痛」は熱による関節痛か。
「胸腹満」の「満」は「懣」の通仮字と考え、もだえ苦しいと解釈しました。肺炎によるものか?腹はみぞおちや季肋部あたりのことを言っているのでしょうか。
「洒沂」=「洒淅」。ひどく寒いこと。
「脊」と「背」をどう区別していたかがよくわかりません。字も似ているし誤字もあったのではないかと思います。「脊」が背骨、「背」が背部と区別しようと思えばできますが、いまいち納得がいかない。「脊背急強」は、「脊急」「背強」なり「脊強」「背急」をただ合体させただけか。『素問』骨空論(60)に「脊強」、繆刺論(63)に「背急」、『霊枢』経脈(10)に「脊強」がみられるので、「脊強」「背急」の組み合わせと思われます。

以上の内容は、ただの趣味です。学者としての訓練・教育・指導等は受けてはいませんので、多々誤りはあるかと思いますが、どうぞお付き合いください。誤り等ご指摘いただければ幸いです。

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