肩のツボ②―肩髃・肩髎・臑兪・秉風・天宗
肩のツボの2回目です。今回は肩峰にある肩髃、肩髎、肩関節の後方にある臑兪、肩甲棘の上にある秉風、肩甲骨の中央にある天宗の『明堂』復元主治条文をみていきます。
目次
肩凡二十八穴第十三
肩髃
各書の主治条文
医心主治条文
肩中熱指痺臂痛
甲乙主治条文
肩中熱指臂痛●肩髃主之(巻之十 手太陰陽明太陽少陽脈動発肩背痛肩前臑皆痛似抜第五)
外台主治条文
肩中熱指臂痛
主治条文の比較
医心 | 肩中熱指痺臂痛 |
甲乙 | 肩中熱指 臂痛 |
外台 | 肩中熱指 臂痛 |
復元 | 肩中熱指痺臂痛 |
- 痺:『医心』に従い採ります。
単位条文化
『甲乙』に従って単位条文化すると、次の1条文になります。
①肩中熱、指痺臂痛。
肩が熱し、指、腕がしびれ、痛む。
局所の症状。いわゆる五十肩のような肩関節周囲炎か。熱感があることから炎症期と思われます。
肩髎
各書の主治条文
医心主治条文
肩重不挙臂痛
甲乙主治条文
肩重不挙臂痛●肩窌1主之(巻之十 手太陰陽明太陽少陽脈動発肩背痛肩前臑皆痛似抜第五)
外台主治条文
肩重不挙臂痛
[1] 「窌」=「髎」
主治条文の比較
医心 | 肩重不挙臂痛 |
甲乙 | 肩重不挙臂痛 |
外台 | 肩重不挙臂痛 |
復元 | 肩重不挙臂痛 |
単位条文化
『甲乙』に従って単位条文化すると、次の1条文になります。
①肩重不挙、臂痛。
肩が重く上がらず、腕が痛む。
局所の症状。筋骨格系の問題と思われます。いわゆる五十肩のようなものでしょうか。
臑兪
各書の主治条文
医心主治条文
寒熱肩重腫引甲中痛痺疝1
甲乙主治条文
寒熱肩腫引胛中痛肩臂酸●臑輸主之(巻之八 五臟伝病発寒熱第一下)
寒熱頸瘧適肩肩2不可挙臂●臑輸主之(臂臑の誤り)(巻之八 五臟伝病発寒熱第一下)
外台主治条文
寒熱肩腫引甲中臂酸寒熱頸歴適肩痛不可挙臂(下線部は臂臑の主治症)
参考
『医学綱目』巻六 治往来寒熱 『甲乙』引文
寒熱肩腫引胛中肩臂酸痛 臑腧主之。
[1] 傍注:病
[2] 傍注:臂
主治条文の比較
医心 | 寒熱肩重腫引甲中痛 痺疝 |
甲乙 | 寒熱肩 腫引胛中痛肩肩酸 |
外台 | 寒熱肩 腫引甲中 臂酸 |
綱目 | 寒熱肩 腫引胛中 肩臂酸痛 |
復元 | 寒熱肩 腫引胛中痛肩臂酸痛 |
- 酸痛:おそらくもともと「痠痛」と書かれていたが、『医心』では「痺疝」あるいは「痺病」と誤ったのかもしれない。
単位条文化
『甲乙』に従って単位条文化すると、次の1条文になります。
①寒熱、肩腫引胛中痛、肩臂酸痛。
悪寒発熱し、肩が腫れて肩甲骨の方まで痛み、肩と腕がだるくて痛む。
おそらく結核性リンパ節炎。結核菌が鎖骨上リンパ節を侵しているために、肩が腫れ、肩甲骨や腕の方まで痛みやだるさが出ていると思われます。
秉風
各書の主治条文
医心主治条文
肩痛不可挙
甲乙主治条文
肩痛不可挙●天容及秉風主之(巻之十 手太陰陽明太陽少陽脈動発肩背痛肩前臑皆痛似抜第五)
外台主治条文
肩痛不能挙
主治条文の比較
医心 | 肩痛不可挙 |
甲乙 | 肩痛不可挙 |
外台 | 肩痛不能挙 |
復元 | 肩痛不可挙 |
- 可:『医心』『甲乙』に従います。
単位条文化
『甲乙』に従って単位条文化すると、次の1条文になります。
①肩痛不可挙。
肩が痛み、腕を上げることができない。
局所の症状。筋骨格系の問題と思われます。これもいわゆる五十肩のようなものか。ツボの位置としては棘上筋。
天宗
各書の主治条文
医心主治条文
肩重肘痛不挙
甲乙主治条文
肩重肘臂痛不可挙●天宗主之(巻之十 手太陰陽明太陽少陽脈動発肩背痛肩前臑皆痛似抜第五)
外台主治条文
胸脅支満搶心欬逆肩重肘臂痛不可挙
主治条文の比較
医心 | 肩重肘 痛不 挙 |
甲乙 | 肩重肘臂痛不可挙 |
外台 | 肩重肘臂痛不可挙胸脅支満搶心欬逆 |
復元 | 肩重肘臂痛不可挙 |
単位条文化
『甲乙』に従って単位条文化すると、次の1条文になります。
①肩重、肘臂痛不可挙。
肩が重く、肘、腕が痛み、上げることができない。
局所の症状。筋骨格系の問題と思われます。これもいわゆる五十肩のようなものか。ツボの位置としては棘下筋。
臑兪を除いて肩髃、肩髎、秉風、天宗は肩の痛み、腕が上がらないといった局所の症状に用いられています。
臑腧は結核性リンパ節炎と思われる症状に使われています。腋窩リンパ節が近いから?
以上の内容は、ただの趣味です。学者としての訓練・教育・指導等は受けてはいませんので、多々誤りはあるかと思いますが、どうぞお付き合いください。誤り等ご指摘いただければ幸いです。
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