10人に1人はお困りの腰痛。原因と対処法
こんにちは、鍼灸師の関屋です。
今回は腰痛について書いていきます。
目次
10人に1人は腰痛
厚生労働省が行った『2019年国民生活基本調査』によれば、1000人当たり、男性は約91人、女性は約113人が腰痛を訴えています。つまり10人に1人が腰痛を感じていることになります(ちなみに男性の訴え1位が腰痛、2位が肩こり、3位が鼻が詰まる、鼻水が出る、女性の訴え1位は肩こり、2位が腰痛、3位が手足の関節が痛む、でした)。2021年の結果はまだわかりませんが、在宅勤務が増えたことで、腰痛を訴える人がさらに増えているかもしれません。
参考 性別にみた有訴者率の上位5症状(複数回答)
厚生労働省『2019 年 国民生活基礎調査の概況』より引用
痛みの原因―なかには危険なものもあるから要注意
今まで腰痛は、痛みを引き起こしている原因を特定できるものが15%、特定できない「非特異的腰痛」が85%と言われていました。しかし『腰痛診療ガイドライン2019』にある報告によれば、腰痛の内訳は椎間関節性22%、筋筋膜性18%、椎間板性13%、狭窄性11%、椎間板ヘルニア7%、仙腸関節性6%などで、75%以上で診断が可能であり、診断不明の非特異的腰痛は22%しかありませんでした。
上記のように椎間関節や筋肉、腰椎の変形など筋骨格系が痛みの原因となることがほとんどですが、その他に、内臓の病気が原因となるもの、血管の病気が原因となるもの、あるいは精神的ストレスが原因となるものもあります。
とくに知っておいて欲しいことは、危険な腰痛なのか、そうでないかです。
どういった場合が危険な腰痛なのか。次のような場合は注意が必要です。病院で診てもらいましょう。
・じっとしていても痛みがある
・痛みで目が覚める、睡眠が妨げられる
・痛みが1ヵ月以上かけて徐々に強くなっている
・体重が減っている
・発熱
・胸に痛みがある
・癌、ステロイド治療、HIV感染の経験がある
・お尻や足のしびれがある
・背骨が変形している
体を動かしたときだけ腰に痛みがある場合は、椎間関節や筋肉などが原因である可能性が高く、当面の危険はありません。ほとんどの腰痛は1ヵ月以内に痛みがなくなる心配のいらないものです。ただし、徐々に痛み強くなっていたり、3ヵ月以上痛みが続く場合は一度病院の受診をおすすめします。
過負荷、姿勢、運動不足、ストレス、寒冷などが腰痛に影響
痛みを引き起こす原因は筋骨格系であることがほとんどでした。ではどうして筋骨格系に問題が生じるかというと、いちいちここに記さなくてもおわかりかと思いますが、重いものを持ち上げたり、無理な姿勢や同じ姿勢が続いたりすることによって腰に大きな負担がかかること、あるいは運動不足や加齢によって筋肉が衰え、柔軟性を失うことが原因としてあげられます。腰椎やその周りの筋肉にかかる負担が許容量を超えると、筋肉は疲労し、緊張します。筋肉が疲労すると、筋肉に存在するグリコーゲンなどのエネルギーが枯渇します。また筋肉の緊張が続きますと血管が圧迫されることにより、血流が悪くなります。こういった状態が続きますと、筋肉に十分な酸素や栄養を供給することができないため、疲労した筋肉が回復しません。筋肉による支えを失ったために、骨、関節への負担が強くなり、痛みにつながります。もちろん筋肉の方もこり、痛みが生じます。
先ほど精神的ストレスも腰痛の原因となると述べました。3ヵ月以上痛みが続く場合は、この精神的ストレスが絡んでいることが多いです。精神的ストレス、緊張が続くと、交感神経が優位になり、血管が収縮します。短時間であれば問題ないのですが、長時間緊張状態が続くと交感神経、副交感神経の切り替えがおかしくなり、さまざまな症状を引き起こします。肩こりだけでなく、背中、腰の筋肉も緊張し、腰痛につながります。
また冷えによっても腰痛が起こります。冷えると筋肉がこわばり、血行も悪くなりますので、腰痛になりやすいです。私自身の経験ですが、疲労がたまっていたところに、さらに足腰を冷やしてしまったがために、ぎっくり腰を2回やってしまったことがあります。
前回は肩こりについて書きましたが、比べてみますと、肩こりにしても腰痛にしてもだいたい原因は似たようなものですね。
腰痛予防・改善のためのストレッチ・ツボ
ここでは腰椎を支える筋肉に対して、柔軟性を回復し、低下した筋力を鍛えるためのストレッチと腰痛によく使うツボを紹介します。
腰を伸ばすストレッチ 姿勢の改善にもなります
①四つ這いになり、肩の下に手が、骨盤の下に膝があるようにします。
②息をゆっくりと吐きながら背中を丸めます。このとき頭を下げてお臍を見るようにしましょう。
③息をゆっくり吸いながら背中を反らしてお尻を突き出します。このとき頭を上げて斜め上方を見るようにしましょう。
②③を10回繰り返します。ゆっくり決して無理はせず行いましょう。
ゆっくり呼吸をしながら動きましょう。とくに背中を丸めるときに、お臍を引っ込ませ、息を吐ききることで、インナーマッスルを刺激することができます。骨盤の動きも大事です。背中を丸めるときは骨盤を後傾させ、背中を反らすときには骨盤を前傾させます。
腰痛に使うツボー委中
腰痛によく使うツボとして、膝の裏側にある「委中」というツボがあります。
委中:膝の裏の中央
膝裏は柔らかいところなので急に強く押さないようにしてください。ゆっくり押しましょう。
やり方は、椅子に座り、軽く膝を曲げて、膝を両手ではさみます。このとき中指を膝裏の中心にあて、親指は膝にあてます。左右の中指は並べます。膝の裏の中央というのはだいたいの場所です。押してみて痛気持ちいいところを探しましょう。そこを3秒かけてゆっくり押し、3秒かけてゆっくり戻します。押す時には息を吐き、戻す時には息を吸います。これを3~5回繰り返します。
委中は腰痛にはもちろん、膝の痛みに対しても使える便利なツボです。
いかがでしたか。今回は腰痛について述べました。腰痛には危険なものもあり、どういった場合に注意が必要か述べました。ですが、ほとんどの腰痛は筋骨格系の問題で、日常生活の動き、姿勢による腰への負担が原因であることが多いです。それに対処する方法として、腰を曲げ伸ばしするストレッチと、腰痛によく使うツボ「委中」をご紹介しました。皆様の腰痛の軽減・予防につながれば幸いです。
当院では腰痛に対して、鍼、灸による施術はもちろんですが、刺絡(吸い玉)の施術を行います。とくに腰が悪い人の腰には、細絡という毛細血管が皮膚表面に浮き出たものがあることが多いです。これは血流が悪いことのサインです。これを取り除くことで、痛みの軽減が期待できます。腰痛でお困りの方はお気軽にご相談ください。
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